人生の後悔がまた一つ減った日

「TAEMIN Japan 1st TOUR ~SIRIUS~」

11/24@武蔵野の森総合スポーツプラザ

空のなかに、ただ一人の青年がポツンと浮かんでいる。背景に映し出された空の映像の真ん中で、まるでいまそこにテミンが誕生したばかりであるかのように、「DOOR」で公演の幕があけた。背景の空模様は音楽に合わせて変化し、雷が激しく光りだす。そしてその空の中でテミンは力いっぱいに舞い始める。その姿はさながら雷を操る神様のようだ。この神聖な空気を壊してはいけない、一曲目から彼の作り出す世界観に息をすることさえ躊躇われた。

そんな圧倒的なオープニングの次は「MOVE」。音楽番組で見ていた時は節制された美しい線が魅力的な振付だと思っていたけれど、実際に見ると思っていたよりもダンスが激しい。相手に魅了されるという内容の歌を歌っているけれど、テミンはいつだって魅了する側だ。紫の衣装も相まって、“妖しい”という言葉がぴったりなパフォーマンスに引き込まれていく。

そうかと思えばMCでは可愛らしく愛嬌をにじませ、ダンサーと一緒になって楽しむ曲では無邪気な笑顔を振りまく。万華鏡のように次々と出てくる新たな表情を逃すまいと目が、脳が、耳が、忙しい。

公演のちょうど中盤にあたる「Flame of Love」は四隅に炎が立てられ、その中心でテミンが躍るという演出。私がいたのはいわゆる天井席で、テミンの細ーい体は米粒サイズでしか見えない。けれど炎よりも激しい、テミン自身が放つ生命エネルギーで体が大きく見える。踊りに託された感情が放物線を描いてしっかりと天井席まで届く、そんな錯覚を覚えるくらいに。アイドルの公演は天井席の場合たいていスクリーンで表情を見てしまうけれど、テミンの公演ではそれが躊躇われる。その踊り、そのエネルギー全部を目に焼き付けておきたくなる。奇跡のような生命体をこの目にできて、人生の後悔がまた一つ減った日となった。